【ロシア語メモ】ボリシェビキとメンシェビキ

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辞書によると、ボリシェビキ(ボルシェビキ)とは「レーニンを指導者とするロシア社会民主党左派で1917年の十月革命でプロレタリア独裁政権を樹立、後にロシア共産党と改称」。つまり、ソ連の祖であると。そのボリシェビキと路線対立して分派となったのが、メンシェビキだ。

どちらも歴史用語としては頭にあった。

が、きょう、ソ連崩壊を扱った佐藤優氏の文庫本を読んでいて、メンシェビキは「『少数者』の意」、ボリシェビキは「多数派」云々と注釈があって、「はっ」とした。

ロシア語で書くと、ボリシェビキ=Большевик、メンシェビキ=Меньшевик

つまり、

Больше(ボリシェ:より大きい)+вик=多数派
Меньше(メンシェ:より小さい)+вик=少数派

そのままんま。

ボリシェビキ、メンシェビキと聞くと「いかにもロシア革命」だけれど、日本語に直訳すれば、単に「多数派」、「少数派」だったのか。言ってみれば「右翼」と「左翼」みたいな二分法の用語であった。

たとえば、

日本語初学者のロシア人に「『Дзюдо』(ジュードー:柔道)は『柔らかい』+『道』という二つの漢字から成り立つ単語だよ」と説明したら、同じように「なるほど」と思ってもらえる、のかな。

ちなみに、「вик」(ビキ)は他にも目にする。現代のロシア政治用語で、日本の新聞でも登場する「Силовики」(シロビキ、治安・国防機関出身者の派閥)は、

сила(シーラ:腕力、強制力、力)+вик

これも、ほぼそのまんまだ。ロシア語での新語の作り方は、漢字の組み合わせによる日本語のそれに似ている気がする。

【ロシア語メモ】「完了体」怖い

【ロシア語・考】「完了体」怖い

ロシア語の動詞には「不完了体」と「完了体」という2種類があり、ペアをなしています。

不完了体は、やっている途中の「過程」であることや、「習慣」であることを示す。
完了体は、やり終わった「結果」であることや、「1回」の動作であることを示す。

完了体は、「やり切ったぞーー!」というイメージがある、と思う。

例えば、「暗記」を意味する動詞には、

不完了体:учить(ウチーチ)=暗記する
完了体 :выучить(ヴィウチーチ)=暗記してしまう

のペアがある。で、しばしば授業で先生に新出の単語を「выучить」するよう言われる。つまり、「暗記し切れ」と。

では仮に、1回暗記して「『выучить』しましたよ」(Я выучил.)と先生に言って、その後、忘れてしまった単語があるとして、その場合はどうなる?

それは結局、「『выучить』できてなかったじゃないか、このウソつきが!」と言われても仕方ないということか?

となると、安易に「『выучить』しましたよ」とは言えないわけで、うっかり完了体を使うのは怖いなと思った次第。

『イワン・デニーソヴィチの一日―ОДИН ДЕНЬ ИВАНА ДЕНИСОВИЧА』

読書記録『イワン・デニーソヴィチの一日―ОДИН ДЕНЬ ИВАНА ДЕНИСОВИЧА』(ソルジェニーツィン、木村浩訳、新潮文庫)

「胃の腑は野菜汁を歓迎して、思わずふるえだす。うむ、うまい!いや、ほかならぬこの一っ時のために、囚人たちは生きているのだ」

どんなグルメ評論家も絶対に敵わないのは、囚人たちが食や煙草へ向ける執着と喜びだ。過酷な日常であればあるほど、喜びは1点に集中する。

スターリン時代の強制収容所(ラーゲル)を、善良なる中年男性の一日を通して淡々と描写する本作でも、随所に食への渇望が顔をのぞかせる。それがリアリティーというものだろう。

のちにソ連を追放されるノーベル文学賞作家のデビュー作。1962年発表。1953年まで続いたスターリン時代の圧政を初めて文学作品として発表したものという。極寒の中央アジアの収容所での日常を、どこかほのぼのと、細部にわたって描く。

ロシア人のみならず、ラトビア人、ウクライナ人、エストニア人、モルダビア人、ユダヤ系と登場し、いかにもソビエト連邦だ。囚人の出自は、農民、旧富農、キリスト教徒、将校、官僚、芸術家と、これまた平等ではある。

「ラーゲルでくたばっていく奴は、他人の飯皿をなめる奴、医務室をあてにする奴、それから、仲間を密告しにいく奴だ」

いかなる場所でも日常生活を確立し、工夫し、喜びを見いだし、自尊心と信頼とを失わずに生きる普通の人間が生き続けられるのだ、というメッセージが込められている。

スターリンの大粛正の恐ろしさは、次の一言に集約される。

「ひとりの人間の運命なんて、どうにでも変えられるのだ……」

イーゴリのうた

テキストのイーゴリにあって俺にないふたおやだとかふるさとだとか

テキストのイーゴリ、手紙をよく書くが用心しなよ文の怖さを

テキストのイーゴリ、いったいなぜ君はピーテルだけを招かなかった

テキストのイーゴリいつか打ち上げに乾杯しようウオトカあけて